月面探測の場合、無人で行なうのと、有人で行なうのとでは、それそれ利 久しぶりに、宇宙開発に新らしい技術突破がなされた。ソ連が世界ではじ 害得失がある。有人の月飛行にはまず、サターン 5 号のような超大型の打上 めて自動装置による月からの岩石採取に成功したのである。 げロケットが必要である。しかも、無人の場合とはくらべものにならないほ さる九月十二日打ちあげられたソ連の月探測器ルナ号が、二十日午前八 どの、装置器械類の高い安全性、信頼性が要求される。それでもなお、危険 時ごろ月の豊かの海に軟着陸し、電気ドリルで岩石を採取、再び飛びあが の可能性ののこることは、今年四月のアポロ号の事故のことを考えてみれ って、一一十四日午前八時半ごろ予定されたソ連領カザフ共和国内に軟着陸し たのだ。月の岩石標本は気密容器に密閉されたままソ連科学アカデミーに分ば明らかだろう。 ーーーもちろん防疫処置 これに対して無人の場合は、宇宙船そのものの人間の乗る居住空間、酸 析のため送られたが、その分析結果は、判明ししだい 素、飲料水、食糧、空気浄化装置、排泄物処理装置、着陸船、船外活動用の をおわってのちーー全世界に公表されることになっている。 あらゆるシステムなど、厖大な装置、装備の一切が不要になる。そのため打 このルナ浦号の成果の意味するところは大きい 上げロケットも、せい・せいサターン 1 型程度の推力のもので十分になり、そ ソ連は、かねてから「無人探測で間にあう宇宙開発は、無人の自動ステー ションで行なう」と言明してきた。事実、昨年七月アメリカのアポロⅡ号がれでも、有人のものよりはるかに多くの観測器械や自動器械を積みこむこと 月面に着陸し、アームストロング、オルドリン両宇宙飛行士が人類として初ができる。そしてこれは、費用の点で、無人は有人の 1 一幻から 1 一ですむ ( タス通信 ) ということにもつながるのだ。 の月面活動を行なっていた際、一足先に打ちあげられて月の孫衛星となって もう一つ重大なことは、かりに失敗しても人命を失うという最悪の事態は いたソ連のルナ新号が、月面に軟着陸し岩石を採取してアメリカの鼻をあか つまり 考慮しなくてよいし、それだけに、月の着陸場所も、より大胆に すのではないか、と見られたことがあった。 自由に選ふことができる。ルナ号が、アポロ・シリーズのような月の赤道 日本の宇宙科学者たちは、たいてい、ソ連の宇宙科学技術がそこまではい っていないだろうといって、これを否定したがーーーそしてじっさい、ルナ「附近でなく、ずっと極よりの豊かの海に着陸したのもそのためだし、必要と 号はアポロⅡ号が帰還の途につく直前に月面に落下し、ソ連も「すべての計あれば裏側にでも着陸、帰還させることができるのだ。 一方、無人の場合にも、もちろん、欠点は多々ある。 いま考えてみると、やはりソ連はこのとき 画を終了した」と発表したが 人間は、すくなくとも現在のところ、機械よりもはるかに複雑な判断をく すでに今回のルナ号と同じことをやろうと思っていたにちがいない。 だすことができ、意外な事態に対処できる。アポロⅡ号の場合も、宇宙飛行 それが失敗に終ったのは、月面への人間着陸というアメリカの壮挙に、一 矢報いたいという気持から、恐らくはまだ準備の完全でなかったルナ号を士たちは、着陸点に障碍物のあるのを見てとって、ただちに手動装置を使 、その上を飛び越して着陸船をぶじ月面上におろすことができた。もし自 打ちあげた結果であると考えて、そう間違いではないだろう。今回のルナ 号は、その後、十分に計画を練り直し修正を加えて、あらためて試みたもの動ステーションならば、それほど正確に臨機応変の処置がとれたかどうかは であるだけに、ソ連の宇宙開允関係者たちの喜びようもさこそと思われる疑わしい。つぎに人間は、月着陸船から外に出てかなり自由に動きまわり、 が、客観的に見ても、今度の成功は、技術的には、アポロⅡ号の成果に匹敵標本を選んで集めることがでぎる。アポロⅡ号では、最初のことでもありそ の行動範囲はわずか二、三 0 メートルたったが、アポロ肥号になると、五 0 するものといっていいだろう。 連載サイエンス・ジャ -•-•ナル ルノ号成功をめぐって 加藤喬 4
WORLDS OF IF S C 工 ENC E 工 C T 工 0 N S F マガジン 12 月号 ( 第 11 巻第 1 ま号 ) 250 昭和 45 年 12 月 1 日印刷発彳テ発行所東京都 千代田区神田多町 2 の 2 郵 101 早川書房 TELA 京 ( 254 ) 1551 ~ 8 奏行者早川清 編集者森優印刷所東洋印刷株式会社 約 特 造侃ニ達侃明 慶睛健靖和 淵島方森島藤 岩中緒金中斎 紙扉ト博造一一 ・ス慶章 次ラ鍋淵藤 表目イ真岩山 U) LL スキャナー 石原藤夫 野田昌宏 美術館【凸の巨星たち おそるべき本体論 ( オントロジー ) の小説ー「団精ニ 2 」 ( セプン、ビー )% 特別連載ファンタジイ・コミック ( 最終回 ) 一・森亠早太郎・ 7 DÅ でてくたあ 〈日本〉石川云同司・ヘ海外〉佃皀知正士夭 トータル・スコープ サイエンス・ジャーナルルナ号成功をめぐって ク一フークとの時間 国際 (f) LL シンポジウム・エピソード 放射性同位元素炭素の不思議な″よろめき〃 登場した本格的コンピューター占星機・ 世界酳報」エフレーモフの新作「丑の刻」、 : 「アンドロメダ病原体」映画化完成近し・ : てれぽーと 人気力ウンター すべーす・たいむ・あんてな 第 9 回日本 LL 大会レポート 長期連載異能作家 0 ・ 1 のニュ 世界 " みすて 第三回 筒井康隆 脱走と追跡のサンバ 情報社会の本質を見出すべくテレビ局に潜り込んだ俺は脱出路を発見出来なかった / ホットエ・学入門 ・アイーリング最新作 / 福島正実 129 4 1 46 1 20 109 144160 45 22078
19 70 年 1 2 月号目次 異色作家久びさの登場 地球に忘れられた夜 かくれんば 最後の手紙 、新作長詩《国際シンポジム税歌 老ェイハプの友 ( そしてノアの ・友なるもの、 ( その物語を唱一つ 巻末特選オヴ土・ル、ツ巨匠の中篇大作一毛 0 ジョ屮サン , ホーグ氏の = 不愉快な職業 話題の最新長篇連載完結ニ〇〇枚一挙掲載 ート・ンルウア 、司泉 ) 0 ばろう瞽 彼は時を超 - た狂おしい恋を遂けるため、時間犯罪の数々を犯さねはならなかったー 六 0 枚 都筑道夫 アーサー・ 0 ・クラーク フリツツ・ライノ 第レイ・プラッドベリ ロハート・ < ・ハインライン 1 6 2 1 7 2